職場のチャットで「これ、誰か見てくれない?」と投げる場面があります。障害の調査、たまった問い合わせの仕分け、決まったことのまとめ。頼む相手がいなくて、結局あとで自分がやることになる。
その投稿に @Claude と書き足すと、Claude がその場で受け取って作業し、その投稿にぶら下がる返信の並び(スレッド)に結果を返す。それが Claude Tag です。
2026年8月時点では公開ベータという段階です。誰でも使える形で公開されてはいるものの、正式版になるまでに動きや呼び名が変わることがあります。この記事の内容も、そのつもりで読んでください。
そして、いちばん先に言っておかなければいけないことがあります。
使えるのは Team と Enterprise のプランだけです。公式ドキュメントに「個人向けのプラン(Free・Pro・Max)では使えない」とはっきり書かれています。また、Anthropic が直接提供しているサービスとして使っていることが条件で、他社のクラウド経由で Claude を導入している場合は対象外です。まず「自分の職場は対象なのか」から確認してください。
この記事では、何ができるようになったのかと、導入するなら先に知っておかないと事故になるところを、公式ドキュメントに沿って整理します。手順書ではありません(理由は最後に正直に書きます)。
何が起きるのか
公式ドキュメントに載っている例を、そのまま順に追うとこうなります。
- チャンネルで誰かが「決済が朝からずっと遅い気がする」と書く
- 別の人が「@Claude 調べてくれる? 今朝のリリース前後で速さを比べて、原因を見つけて」と書く
- Claude が「やります」と返し、やったことをチェックリストにして、その場に出しながら進める
- 調べ終わったら、結果をそのスレッドに書く
大事なのは、このやり取りがチャンネルの全員に見えていることです。誰かの個人的なチャット画面の中ではなく、みんなが見ている場所で作業が進みます。Anthropic のヘルプセンターは、この点を「やり取り全体がみんなに見えたままで、誰でも方向を変えたり、途中から引き取ったりできる」と説明しています。
もうひとつ、知っておくと安心なことがあります。Claude が実際に作業する場所は、あなたのパソコンでも社内のネットワークでもありません。Anthropic 側に用意される使い捨ての作業場(サンドボックス)で動きます。会話が始まると作られ、放置されると捨てられます。
いちばん大事な考え方:「誰が頼んだか」ではなく「どこで頼んだか」
ここが、ふだんの Claude といちばん違うところです。公式ドキュメントの一文がすべてを言っています。
What it can reach depends on the channel you’re in, not on who you are.
(何に手が届くかは、あなたが誰かではなく、あなたがいるチャンネルで決まります)
つまり、同じ人が頼んでもチャンネルが違えば、できることが違います。会社の資料や開発中のプログラムへの接続は、管理者が「このチャンネルではここまで」と割り当てる形で決まっているからです。
だから、初めてのチャンネルで仕事を頼む前に、一度これを打っておくと迷いません。
@Claude what can you access from this channel?
(このチャンネルから、何に手が届きますか?)Claude の返信の下にある Configure からも、そのチャンネルの接続先を確認できます。

覚えていることも「場所」につく
ここから先の話をするために、Slack の入れもの2つを先に確かめておきます。会社ごとに用意されている Slack 全体がワークスペースで、その中に部屋がいくつも並んでいます。この部屋ひとつひとつがチャンネルです。ワークスペースのほうが大きい入れものだと覚えてください。
そのうえで。Claude Tag は、話したことを覚えます。ただし覚えている単位が人ではなく、チャンネルです。ここは、導入前に必ず理解しておいたほうがいいところです。
- 公開チャンネルで覚えたことは、ワークスペース全体で共有されます。つまり、ほかの部屋で聞いても出てきます。公式の例で言うと、#data-eng で決まったことを、#analytics で聞いたときに出してきます。
- 非公開チャンネルで覚えたことは、その部屋の中だけに保存されます。ワークスペース側の記憶は読みますが、書き戻しません。
覚えさせ方は、話しかけるだけです。公式に載っている例(英語)はこうです。
@Claude remember for this channel: changes go to acme/data-pipeline, never acme/website
(このチャンネルのこととして覚えておいて。変更は acme/data-pipeline に入れる、acme/website には入れない)
何を覚えているかを聞くこともできます(@Claude what do you remember about this channel?)。チャンネルにいる人なら誰でも、読むことも直すこともできます。
チャンネルの公開・非公開を切り替えたときの落とし穴
ここは知らないと事故になります。公式ドキュメントに、切り替えたときの扱いが明記されています。
- 非公開 → 公開にしたとき:非公開だったころの記憶は持ち越されません。新しいやり取りは、もうそれを読みません。
- 公開 → 非公開にしたとき:公開だったころにワークスペース側へ保存された分は、共有されたまま残ります。他のチャンネルからは、そのまま読めます。
後者が問題です。「途中から非公開にしたから、もう外には出ないはず」と思っていると、外に残ります。消したいときは、管理者(Owner)にワークスペース側の記憶を削除してもらう必要があります。
頼まなくても動く「定例の仕事」を持たせられる
その都度呼ぶだけでなく、決まった時間に決まったことをやらせることもできます。公式ドキュメントでは routine(定例の仕事)と呼ばれています。設定画面はなく、チャンネルで文章として頼むだけです。
@Claude every weekday at 9am Pacific, post a summary of open threads in this channel and anything that looks like it's waiting on someone.(平日の朝9時(太平洋時間)に、このチャンネルで終わっていない話と、誰かの返事待ちに見えるものをまとめて投稿して)
できるのは、おおまかに3種類です。
- 時間を決めて走らせる(朝のまとめ、週末のふりかえり)
- 他のチャンネルを見張る(「#product-announce を見て、関係あるものだけ1日1回ここに投げて」)
- 特定の修正案を1件だけ追いかける
3つ目だけ、少し説明が要ります。プログラムを作る現場では、直したい箇所を1件ずつ「こう直します」という案として出し、ほかの人に見てもらってから本体に取り込む、という進め方をします。この1件をプルリクエストと呼びます。Claude Tag は、このプルリクエストを1本だけ見張って、自動チェックが終わったときや、指摘が付いたとき、取り込まれたときに知らせてくれます。
ただし制限があります。反応できるのは見張ると決めた1本だけで、「新しい修正案が出るたびに」のような設定は Slack 側からはできません。
★日本から使うなら、ここは必ず
時間の指定は、既定が世界標準時(UTC)です。公式ドキュメントには「Schedules default to UTC」とあり、続けて時間帯を書かないと推測されることがあると書かれています。つまり「毎朝9時に」とだけ頼むと、そのまま世界標準時の9時=日本時間の夕方6時に動くか、推測でどこかの時刻に決められるかのどちらかで、どちらにしても思っている時刻とは限りません。「日本時間の朝9時に」と、必ず時間帯まで書いてください。設定したあとに @Claude what triggers do you have set up? と聞けば、実際に何時で登録されたかを確認できます。
設定した定例の仕事は、@Claude !routines で一覧できます。これはチャンネルのものなので、設定した本人がチャンネルを抜けても動き続けます。逆に、チャンネルにいる人なら誰でも止められます。
チャンネルとダイレクトメッセージでは、減るものが違う
ここも、導入前に決めておいたほうがいいところです。
まず、人数ぶんの追加料金はかかりません(「Adding Claude to Slack doesn’t add a per-seat charge.」)。チャンネルやスレッドでの仕事は、使った量に応じて組織の残高から引かれます。残高は管理者が入れておく金額で、請求期間ごとの上限(spend limit)も設定できます。
問題はここからです。ダイレクトメッセージ(Claude と1対1でやり取りするチャット)だけは、その残高から引かれません。
A DM runs on the sender’s own claude.ai account and follows that seat’s usual usage limits, so the organization spend limit doesn’t apply to it.
(ダイレクトメッセージは、送った本人の claude.ai アカウントで動き、その人のふだんの利用上限に従います。だから組織の上限はそこには効きません)
ここは減るものの種類が違うので、並べるときに注意が要ります。チャンネルで減るのは会社が積んだ金額、ダイレクトメッセージで減るのはその人が1日・1週間に使える量の枠です。同じ「使いすぎ」でも、片方は請求書に出て、もう片方は本人の画面が止まります。
「会社が払ってくれると思っていたら、自分の枠が先に無くなった」が起きうるところです。管理者は、ダイレクトメッセージを組織全体で止めることもできます。
なお、上限に達したときの動きは公式に明記されています。「上限を超える作業は断られ、黙って途中で切られることはない」。中途半端な結果が返ってくる心配はしなくていい、ということです。
導入:アプリを入れるのは「前提」で、設定ではない
ここも誤解されやすいところなので、公式の言い方をそのまま引きます。
Installing the Claude app in Slack is a prerequisite, not the setup. Setup is provisioning an identity.
(Slack に Claude アプリを入れるのは前提であって、設定ではありません。設定とは、身元を用意することです)
ここで言う「身元を用意する」とは、Claude に社内のどこまで手を届かせるかを決めて、そのための鍵を渡すことです。Claude Tag は、最初は社内のどこにも手が届かない状態で始まります。そこに「この社内サービスにはこのログイン情報で入ってよい」「このプログラムは読んでよい」「このチャンネルで働く」を、管理者が1つずつ割り当てていきます。
- やる人:Claude 組織の Owner(ヘルプセンターの記述では Primary Owner か Owner)
- やる場所:
claude.ai/admin-settings/claude-tag - 回数:一度だけ。使う人ごとの設定は要りません
使う人がすることは、本当にありません。チャンネルに Claude がいれば、@Claude と書くだけです。

正直に:この記事は「試していません」
ふだんこのマガジンでは、実際に手を動かして確かめたことを書いています。今回はそれができませんでした。
理由は単純で、Claude Tag は Team と Enterprise のプランでしか使えず、このサイトの運用に使っているのは個人向けのプランだからです。試せないものを「試しました」とは書けないので、この記事はすべて公式ドキュメントを読んで整理したものです。出典は最後に並べてあります。
あわせて、日本語のワークスペースでの動き方については公式に記述が見つかりませんでした。そこは書いていません。
よくある質問
Q. これまでの「Slack で Claude を使う」と何が違うのですか?
A. 大きく3つです。①場所ごとに覚えている(チャンネルの記憶)、②頼まなくても決まった時間に動ける(定例の仕事)、③誰かの代理ではなく、そのチャンネルに与えられた権限で動く。1回ずつの質問に答える使い方から、そのチャンネルに常駐して仕事を持つ使い方に変わった、と考えると分かりやすいです。
Q. 非公開のチャンネルの話が、別のチャンネルに漏れませんか?
A. 非公開チャンネルで覚えたことは、そのチャンネルの中だけに保存されます。ただし公開だったチャンネルを途中から非公開にした場合、公開だったころにワークスペース側へ保存された分は残ります。ここだけは切り替えの前に確認してください。
Q. 個人で試すことはできますか?
A. できません。個人向けのプラン(Free・Pro・Max)は対象外です。個人で Claude を使う話はClaudeの始め方やClaudeスマホアプリの使い方にまとめています。
参考・出典
- Work with Claude Tag — Claude 公式ドキュメント(2026年8月28日 確認。対象プラン・動く場所・課金・導入)
- What Claude Tag remembers — Claude 公式ドキュメント(同日確認。記憶の範囲と公開・非公開の切り替え)
- Set up routines — Claude 公式ドキュメント(同日確認。定例の仕事・UTC 既定・出力先の制限)
- What is Claude Tag? — Anthropic ヘルプセンター(同日確認。設定できる人・上限に達したときの動き)
- 発表時のニュース:Anthropic「Claude Tag」、Slack常駐で社内学習(当サイト・2026年6月24日)
もっと学ぶ
プランの違いはClaudeの無料版とProの違い、個人で使う記憶の仕組みはClaudeのメモリ機能の使い方にあります。Claude・Claude Code の使い方はクロード活用法(使い方マガジン)に、Claude 全体の入口はClaude ハブから。
【編集メモ】
この記事は、公式ドキュメント3ページ(総覧・記憶・定例の仕事)とヘルプセンターの記事1本を、2026年8月28日に読んで書きました。もとの企画は「入れ方の手順ガイド」でしたが、調べた結果、対象が Team と Enterprise だけで、こちらの環境では試せないと分かったので、角度を「何ができるようになったのか/導入前に知っておくこと」に振っています。試せていないので、手順の1つ1つを「こう動きました」とは書いていません。
書いていて、いちばん読者に伝わってほしいと思ったのは「権限も記憶もお金も、人ではなく場所につく」という一点です。ふだんの Claude は「自分のもの」ですが、Claude Tag は「そのチャンネルのもの」です。ここを取り違えると、権限の設計も、非公開チャンネルの扱いも、請求の見積もりも、全部ずれます。
下書きの段階で、別の Claude に「反証を探す立場」で読んでもらいました。そこで直したのが次の3つです。(1) ダイレクトメッセージの英文引用を、途中で切って引いていた(落とした後半こそが「組織の上限は効かない」という肝でした)。(2) 節の見出しを「お金の出どころが違う」と書いていたが、比べていたのは会社が積んだ金額とその人が使える量の枠で、種類の違うものを1つの言葉でくくっていました。(3) 時間の既定について「必ず世界標準時として扱われる」と言い切っていたが、公式は「書かないと推測されることがある」でした。強く書けるほうに寄せていたわけです。ほかに、ワークスペースとチャンネルの大小関係を説明せずに使っていた点も直しました。
なお、古い案内ページ(support.claude.com の「Get started with Claude in Slack」)は、いまは総覧ページに転送されます。検索で古い URL に当たった場合は、転送先を見てください。










