日本はAIを一人でいちばん使っている。仕事の流れに入っているのは13.1%

日本の会社は、AIを使っていないと言われがちです。ところが数字を見ると、逆でした。

AIに取り組んでいる会社の中で見ると、一人で使うことにかけては日本がいちばん多い。それなのに、部署の仕事の流れに入っているのは13.1%しかありません。アメリカとドイツは、どちらも37%台です。

使っていないのではなく、使っているのに、仕事のやり方が変わっていない。この記事は、その差がどこから来るのかを、一次資料の数字だけで追いかけたものです。

まず、数字を並べます(同じ調査・同じ回答者)

出どころは、情報処理推進機構(IPA)が2025年6月に公表した『DX動向2025』のデータ集です。2024年度の調査で、答えているのは生成AIを導入している、試している、または検討している企業。日本741社、アメリカ397社、ドイツ364社です。

大事なのは、これから並べる4つの数字がすべて同じ調査の、同じ設問群で、同じ会社に聞いたものだということです。別々の調査から都合よく拾ってきた数字ではありません。

使い方 日本 アメリカ ドイツ
個人で業務に使っている(文書作成・アイデア出しなど) 62.1% 47.6% 51.1%
個人や部署で試している 50.3% 46.3% 36.8%
部署の業務プロセスに組み込まれている 13.1% 37.8% 37.9%
全社的なサービスに組み込まれている 16.5% 19.1% 19.5%
IPA『DX動向2025』データ集 p.74「生成AIの具体的な利用状況(国別)」より。2024年度調査。

一段目と三段目だけ、もう一度見てください。

  • 個人で使う:日本 62.1%(3か国でいちばん多い)
  • 部署の流れに入っている:日本 13.1%(米独の約3分の1)

個人で使う人の割合は日本がいちばん高いのに、それが仕事の流れに入る段になると、いちばん低くなります。入り口は広くて、その先が細い。

これは日本だけの形ではありません(ただし日本は特に極端)

同じ形の落差は、世界全体でも起きています。ここから使うのは ServiceNow という会社が2026年6月に出した調査(19か国・12業種・経営層4,500人。別に従業員2,000人にも聞いています)です。

先に立場を書いておきます。ServiceNow は、バラバラの業務システムを1つの基盤にまとめる製品を売っている会社です。だからこの調査は、構造として「1つにまとめましょう」という結論に向かいやすくできています。数字そのものは同じ調査の中で一貫しているので使いますが、誰が調べたかを頭に置いて読んでください。

その調査では、こうなっていました。

  • 人が一手ずつ指示しなくても、いくつかの作業を続けてやってくれるAI——これをAIエージェントと呼びます。これを使っている企業:59%
  • 複数のシステムをまたいで自動で回るところまで行けている企業:9%

入れた会社は6割近くあるのに、実際に仕事が自動で流れているのは1割弱。「導入した」と「流れが変わった」のあいだに、大きな段差があります。

日本の 62.1% → 13.1% は、この段差がもっと深い形だと言えます。

では、できている会社は何をしたのか

同じ調査の中に、答えがそのまま書かれていました。上位2割の企業(ServiceNow は「ペースセッター」と呼んでいます)について、こう書いてあります。

Pacesetters make deliberate decisions about how work should flow before deploying AI, not after. This allows them to avoid the trap of automating outdated workflows on yesterday’s infrastructure.

(先を行く企業は、AIを配る前に、仕事をどう流すかを意識して決めている。あとからではない。だから「古いやり方を、古い土台の上でそのまま自動化してしまう」罠を避けられる)

最初にやったのは、AIを入れることではありませんでした。「仕事の流れをどう変えるか」を先に決めたことです。

逆に言えば、順番を逆にすると何が起きるか、も書いてあります。古いやり方を、そのまま自動化してしまう。速くはなりますが、やっていることは変わりません。

★ここで1つ断っておきます。「日本の13.1%はこの順番の逆転が原因だ」とは、どちらの調査も言っていません。これは ServiceNow が上位企業について述べていることで、日本の数字と直接つないだのは私です。因果ではなく、重ねて読める話として受け取ってください。

お金は2倍になったのに、直せたのは16%

同じ調査から、もう少し数字を出します(上に書いたとおり、調べたのは統合基盤を売っている会社です)。

  • AIに使うお金は、1年で110%増えた(2倍以上)
  • バラバラの業務システムを、1つにまとめた土台に置き換えられた企業:16%
  • 部門をまたぐ仕事の流れをAIで整えられた企業:16%——★これは上とは別の設問で、たまたま同じ16%です。2つを足したり、1つの数字として語ったりはできません
  • 主要な業務でAIエージェントを広げられている企業:18%
  • AI導入の第一の壁はデータの正確さ・使いやすさ・管理:71%が苦労している

お金は2倍になったのに、流れを直せたのは16%。この2つを並べたのが、この件のいちばん短い要約です。

「うちもそうなれる」とは書けない数字

先を行く2割の企業について、AIに使ったお金に対する戻りが平均160%という数字も出ています。100万円使ったら160万円ぶん返ってきた、という意味です。ただしこれは上位2割の平均であって、AIを入れれば誰でもこうなる数字ではありません。ここを外して引用すると、ただの宣伝文になります。

言われがちだけれど、数字が支えていないこと

この話をすると出てくる説明が2つあります。どちらも、今回の一次資料では支えられませんでした。

「日本人はAIを使わない」——事実と逆です

個人で業務に使っている割合は、日本が62.1%で3か国のトップでした。使っていないのではありません。

「古いシステム(レガシー)のせいだ」——3か国とも2割以下です

「大きな足かせになっている」と答えた企業は、日本・アメリカ・ドイツのいずれも2割以下でした。日本だけが古いシステムに縛られている、という形にはなっていません。

★ここは紛らわしいので分けておきます。上で出てきた「古いやり方をそのまま自動化する」の「古いやり方」は仕事の手順のことで、この節の「古いシステム」は機械のことです。別のものを指しています。数字が否定しているのは後者だけです。

では、日本側で何が違うのか

同じ『DX動向2025』の中に、日本だけ極端に振れている項目がいくつかあります。

  • 会社の仕事のやり方をデジタル前提で作り直すこと(DX)を進める人材の「量」足りないと答えた日本の企業は85.1%(「やや不足」+「大幅に不足」)。★アメリカとドイツは逆側の数字が出ていて、「やや過剰」+「過不足なし」がアメリカ73.6%・ドイツ52.5%です。足している選択肢が違うので、85.1と73.6を直接引き算しないでください。言えるのは「足りないと感じているのは実質的に日本だけ」ということです
  • 人材の「質」:「過不足はない」と答えたのは日本 3.8%/アメリカ 52.9%/ドイツ 25.1%
  • 自社の中で作るか、外に頼むか(内製化):日本は主要事業のシステムを「外部に委託して作る」が4割弱で最多。アメリカは「自社で作る」が5割弱。「必要な部分は自社で作れている」は日本 16.7%で、米独の半分以下
  • そもそも取り組んでいる会社の割合:生成AIに前向き(導入・試験・検討)な企業は、アメリカ8割弱、ドイツ7割弱に対し、日本は5割弱。従業員100人以下では「予定なし」「今後も取り組まない」が8割近くです

もう1つ、働く人の側から見た数字もあります。ServiceNow の調査で、日本の従業員の約6割が「自社の経営陣はAI時代の変化に追い付いていない」と感じていると答えました。★ただしこれは経営層4,500人とは別の調査で、日本の回答者は100人です。人数が少ないので、傾向として読んでください。

それでも、仕事の流れを変える決定は現場ではなく上で行われます。そこが動かないと、個人が便利になったところで止まる——という向きの話ではあります。

まとめ

  • AIに取り組んでいる会社の中では、日本は一人で使うのが3か国でいちばん多い(62.1%)。使っていないわけではない
  • ただし部署の仕事の流れに入っているのは13.1%で、米独の約3分の1
  • 同じ段差は世界にもある(導入59% → 自動で流れる9%)が、日本は特に深い
  • できている会社が最初にやったのは、AIを配る前に「仕事の流れをどうするか」を決めたこと
  • 順番を逆にすると、古いやり方をそのまま自動化することになる
  • お金は1年で2倍になったのに、流れを直せたのは16%

個人でAIを使うところまでは、日本はもう到達しています。次の段が、たぶんいちばん面倒くさいところです。

動画でも話しています

この記事の前半(日本の13.1%)と後半(先を行く会社が最初にやったこと)は、それぞれ動画にもしています。読むより聞くほうが早い方はこちらから。

前半:日本は個人利用が世界一なのに、仕事の流れに入っているのは13.1%という話。
後半:うまくいっている会社が、AIを入れる前にやっていたこと。

参考・出典

もっと学ぶ

「まず一人で使えるようになる」ところは、クロード活用法(使い方マガジン)に順番でまとめています。日本の会社で13.1%しか到達していない「仕事の流れに入れる」の一歩手前までは、ここで足ります。

【編集メモ】

この記事の数字は、すべて一次資料に当たって確認しています。IPAのデータ集は図表がPDFの中で画像になっていて文字として取り出せなかったので、該当ページを画像に描き出して、目で読み取りました。ServiceNow の調査もPDFとページ取得の両方が失敗したため、ブラウザで発表ページを直接開いて読んでいます

書きながら、いちばん気をつけたのは「16%」が2つあることでした。「古いシステムを統合された基盤に置き換えられた企業」と「部門をまたぐ流れを整えられた企業」が、たまたま両方16%です。まとめて「16%しかできていない」と書くと、違う2つを1つの数字にしてしまいます。本文では分けて書きました。

もう1つ落としたものがあります。「日本のIT人材はベンダーに72%が偏っている」という有名な数字です。調べたら元データが2015年時点で、10年以上前でした。いま起きていることの説明には使えないので、外しています。

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    aigeek編集部

    aigeek.biz 編集部。AIの最新動向を、一次ソースにあたって深掘りし、図解と動画でわかりやすくお届けします。記事の制作体制は「aigeek.bizについて」で開示しています。

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