引き出しの中の海 第26話「下書き」
十四年ぶりに灯った父の携帯に、宛先が僕になっている下書きが一件だけ残っていた。本文は三行、三行目は途中で途切れている。続きを知る方法は、もうない。
引き出しの中の海 第25話「待ち受け」
十四年前に止まった父の携帯が、充電器を四本試した先で灯った。待ち受けは、段ボールの上の子猫だった。中には、まだ開けていない下書きが一件だけ残っていた。
引き出しの中の海 第23話「現像」
「これ、いつのですか」「たぶん、三十六年くらい前です」主人は指先だけでパトローネをつまんで、明かりのほうへ向けた。一週間後、封筒には厚みがあった。
引き出しの中の海 第22話「錆」
鍵は、拍子抜けするほど簡単に入った。入ってから、回らなかった。少し戻して、力の向きを変えて、もう一度回した。かちり、という音は、思っていたより事務的だった。




















