引き出しの中の海 第7話「差出人」

死んだ人から、メールが届くことがある。 その日の依頼者は、そ…

引き出しの中の海 第6話「偽物」

死んだ人の声を、もういちど作れます——男はそう言って、両手で…

引き出しの中の海 第5話「待ち受け」

うちは死んだ人の机しか閉じない。生きている人の机を開けたのは…

引き出しの中の海 第4話「セロニアス」

猫は、死んだ人の椅子で眠るのをやめない。 セロニアスは父の猫…

引き出しの中の海 第3話「Sonar」

あるはずがない、と電話で言った人は、2日後の午後、事務所の応…

引き出しの中の海 第2話「錨」

読んでしまった一行は、拾った覚えのない小石に似ている。ポケッ…

引き出しの中の海 第1話「静かな机」

死んだ人の机は、生きている人の机より静かだ。 この仕事を始め…

妥当なコーヒー

二十代の頃、コーヒーの値段を毎回頭に入れていた。退職した先輩のMさんは「数えないと何を飲んだかわからなくなる」と言った。サブスクで何でも飲み放題になった今、僕は何を飲んでいるのか。値段と記憶の静かな関係を描いたエッセイ。

規約の紙が、どこかへいった

利用規約の通知が届いた。投稿が学習に使われるかもしれない、と書いてあった。知らされる前と知らされた後では、書く一文がもう同じではない。Oさんの万年筆の話と、実家の台所に残された走り書きのことを、しばらく考えていた。

宛先が空白のまま

机の引き出しから出てきた、書きかけで出さなかった航空書簡。宛先は空白、本文は三行で止まったまま。四十年以上前に空港で別れた男が「気がかりだ」と言った、その中身を訊かなかった夜のことを、また考えている。言葉になる前のものを、誰かに渡せたことが、あなたにもあるだろうか。