先日、このサイトで作っていた動画を1本、捨てました。
AIが最後まで作り終えたものです。台本も、画も、音声も、書き出しまで全部できていました。それを、人が見て、公開せずに捨てました。タイトルと中身がズレていたからです。
この1本で、渡せるものと渡せないものが、はっきり分かれました。作ることは渡せました。出すかどうかを決めることは、渡せませんでした。
「何を頼むか」は、頼めない
AIに仕事を任せるとき、たいていの人が最初に考えるのは「どこまでできるか」です。でも実際に毎日動かしてみると、詰まるのはそこではありませんでした。
詰まるのは、何を頼むかを決めるところです。ここだけは、頼めません。頼む相手を決めるのが、その判断だからです。
捨てた1本も、AIの出来が悪かったわけではありません。「この題で、この中身でいいのか」を最初に決めていなかったから、最後まで作ってから捨てることになりました。決める場所が後ろすぎたのです。
ここで、私は順番を間違えました
では、どの作業から渡せばいいのか。ここで私自身が想像で書いて外したので、そのまま書きます。
最初に書いた原稿では「面倒で難しい作業ほど、自分にしかできない」としていました。もっともらしく聞こえます。ところが、同じことをAIに聞き直したら、返ってきた答えは違っていました。
取り返しのつかなさは、作業の難しさと比例しません。一番頭を使う見積書より、一番機械的な封入作業のほうが、事故ったときの被害が大きい。
——Claude に「間違えても取り返しがつくのはどれか」と聞いて返ってきた答えより(2026年8月)。調査ではなく、AIの回答です。
言っているのは「難しい作業のほうが安全だ」ではありません。難しさと、失敗したときの被害は、別のものさしだということです。連動していない、という話です。
難しさで測ると、危ないほうを見落とします
- 見積書を作る——いちばん頭を使う作業です。だから念入りに確認します
- 封筒に請求書を入れる——いちばん機械的な作業です。だから流れ作業になります。でも入れ違えたら、よその会社の金額が相手に見えます。投函したあとでは、戻せません
難しさで力の入れどころを決めていると、後者が素通りします。同じ答えの中で、いちばん鋭かったのはこの部分でした。
確認の力の入れどころは「難しい作業」ではなく、「自分の手を離れる直前」と「他社の情報が混ざる工程」です。
封入が危ないのは、単純だからではありません。他社の情報が混ざる工程で、しかも自分の手を離れる直前だからです。
だから、こう決めています
渡す作業を選ぶとき、うちで見ているのは2つです。
- 出す前に、自分の目で確かめられるか
- 間違いに気づいたあと、戻せるか
ただし、これは「渡していい作業を選ぶ」ためのふるいであって、「渡していい」の証明ではありません。両方「はい」でも、他社の情報が混ざる工程や、自分の手を離れる直前の作業は、最後に人が見るようにしておいてください。金額や宛先が絡むものは、とくにそうです。
うちの運用でも、この2つで分けています。記事を書くのはAI、公開ボタンを押すのは人。記事は公開したあとでも直せますが、動画は一度見られたら見なかったことにはできないので、動画のほうを厳しくしています(非公開に戻すことはできますが、見た人の記憶は戻りません)。
今日やること
読んで終わりにしないために、1つだけ。AIに、自分の仕事を仕分けさせてみてください。自分で決めるのではなく、まず並べて聞いてみる、というやり方です。
★打ち込む前に。この先、自分の仕事の中身をAIに打ち込みます。会社の情報を外のサービスに入れてよいかは、勤め先の決まりを先に確かめてください。社名・取引先名・金額は、書かずに進められます。
ChatGPT でも Claude でも、チャットの入力欄にこう打ち込みます(職種と作業は、自分のものに置き換えてください)。
私は営業事務です。今日やった作業を並べます。見積書の作成、問い合わせメールの返信、日報の入力、請求書の封入。この中で、間違えても取り返しがつくものはどれですか。
ポイントは、「やって」ではなく「どれですか」と聞いているところです。頼むのではなく、選ばせています。返ってきた答えを見ると、自分が「面倒だから渡したい」と思っていた作業と、実際に渡していい作業が、ずれていることがあります。
そのうえで、返ってきた仕分けを鵜呑みにしないでください。これはAIの回答であって、あなたの職場の事情は入っていません。使い方としては、自分の頭の中の順番を一度ひっくり返す道具、くらいがちょうどいいです。
動画でも話しています
この話は、後輩と先輩の会話の形で3分半の動画にもしています。捨てた1本の実物も出てきます。
もっと学ぶ
渡す作業が決まったら、次は頼み方です。Claudeのプロンプトのコツと、答えがズレたときの直し方が近道です。全体はクロード活用法(使い方マガジン)に5つの段でまとめています。
【編集メモ】
この記事の芯(取り返しのつかなさは、作業の難しさと比例しない)は、私が最初に書いた原稿と違っていました。初稿では「面倒で難しい作業ほど自分にしかできない」と書いていて、そのほうがもっともらしく聞こえます。同じことをAIに聞き直したら別の答えが返ってきたので、想像で書いたほうを捨てました。ただし、これは調査で確かめたわけではありません。AIの回答を採った、というだけです。本文にもそう書いています。
下書きの段階で、別のAIに「反証を探す立場」で読ませたところ、危ない書き方を1つ見つけてもらいました。初稿では見積書を「出したあとでも訂正できる=取り返しがつく」側に置いていて、そのうえで「2つとも『はい』なら渡していい」と書いていました。これだと「見積書の作成はAIに渡していい」と読めます。元の答えはそんなことを言っていませんし、金額の間違いはいちばん痛い部類です。いまの本文では、ふるいは「渡していいものを選ぶため」であって「渡していいことの証明ではない」と書き直しました。
捨てた動画の話は、実際にあったことです。完成品を捨てるのは気持ちのいいものではありませんが、「作れた」と「出していい」が別だと分かった1本でもありました。









