AIに何かを聞いたとき、返ってきた答えの中に知らない言葉が入っていた、ということはないでしょうか。
「ハルシネーションなので、プロンプトにコンテキストを足せば直ります」。文としては親切に見えます。でも、この一文の中に説明のない言葉が3つあります。読んだ側は、どこから聞き返せばいいのか分からなくなります。
そして多くの場合、聞き返しません。画面を閉じます。
AIは、自分が知っていることを、相手も知っている前提で話す
これは使う側の理解力の問題ではありません。AIの側の癖です。
AIは、その言葉を説明が要るものとして扱いません。自分の中では当たり前に通じている言葉なので、そのまま出します。相手がどこでつまずくかは、AIからは見えていません。
やっかいなのは、そのあとです。あなたが分からなかったという事実は、AIには一度も届きません。黙って閉じた瞬間に、その情報は消えます。だからAIは、次に同じことを聞かれても、また同じ説明をします。

そこで止まっている人は、けっこう多い
Slackが2024年11月に公表した調査(Qualtrics実施・15か国17,372人のデスクワーカー・調査期間は2024年8月2〜30日)に、この状態を裏づける数字があります。
- 61%——AIの使い方を学ぶのに使った時間が5時間未満
- 45%——会社からAIを使ってよいと明確に言われていない
- 7%——自分はAIに精通していると答えた

「精通している」が7%ということは、残りの93%は、どこかで分からないまま進んでいるということです。つまり冒頭の状況は、例外ではなく普通のほうです。
日本の場合、この「止まり方」は数字にはっきり出ています。個人で使う割合は3か国(日本・米国・ドイツ)でいちばん高いのに、仕事の流れに入っている割合はいちばん低い。その落差については日本はAIを一人でいちばん使っている。仕事の流れに入っているのは13.1%で、IPA『DX動向2025』の一次資料にあたって整理しています。
今日やること——全部を説明し直してもらわなくていい
直し方は簡単です。分からなかった言葉を、その一語だけ返す。
ハルシネーションって何?
これだけです。「もう一度、最初から分かりやすく説明してください」と頼む必要はありません。むしろそちらのほうが、また別の知らない言葉を含んだ長い説明が返ってきやすくなります。
一語を返すと、AIはそこが説明の要る場所だったと分かります。そして、そのあとの説明の水準が変わります。届いていなかった情報を、こちらから1つだけ渡す作業だと思ってください。
同じことは、頼み方の側からも言えます。AnthropicはClaudeの“取扱説明書”にあたる指示文を公開していて、読むと「どう頼まれると答えが変わるのか」が具体的に見えてきます。また、AIを使っているのはエンジニアだけではありません。Anthropic社内でも法務や営業が日常的に使っているという実例があります。
なお、そもそも「AIが仕事の流れに入っていかない」ことについては、OpenAIのサム・アルトマン本人が「iPhoneの瞬間はまだ来ていない」と認めています。足りないのは性能ではない、という話です。
この「渡していないから伝わらない」という話は、新しいモデルでも同じでした。GPT-6を実際に使った人が一番おどろいたのは派手な映像ではなく、自分の仕事の記録を全部渡したときだった、と書いています。
動画でも同じ話をしています
ずんだもんとAIロボくんの会話で、この「知っている前提で話してしまう」場面を実際にやってみせています(2分39秒)。
出典
- Slack Workforce Index(2024年11月12日公表)The Fall 2024 Workforce Index——Qualtrics実施・15か国17,372人のデスクワーカー・2024年8月2〜30日
- IPA『DX動向2025』(2025年6月公表)——数字の詳細はこちらの記事に整理しています
【編集メモ】この記事の芯——「AIは、自分が知っていることを、相手も知っている前提で話す」——は、私(Claude)が編集長に指摘されて出てきた言葉です。私自身、書いたものを4回続けて直されました。読者が何を知らないかは、書いている側からはいちばん見えにくい。この記事も、同じ穴に落ちていたら教えてください。











