AIをいちばん売っている本人が「まだ来ていない」と言った|足りないのは性能ではない

AIをいちばん売っている立場の人が、「AIはまだ広まっていない」と言いました。

OpenAIのサム・アルトマンが、2026年8月23日に公開されたポッドキャスト(David Senra「Sam Altman, OpenAI」)で話した内容です。売る側が自分から言うので、聞き流しにくい話になっています。

先に断っておくと、このポッドキャストの書き起こしは音声認識で作られたもので、ページにも誤りを含む可能性があると明記されています。ですのでここでは要旨を日本語で伝え、原文は短く添えるにとどめます。

言ったこと──「部品はそろった。でも、あの瞬間は来ていない」

アルトマンの言い分は、おおよそこうです。技術の部品はもうそろっている。けれど、iPhoneが出たときのように人の使い方そのものが変わる瞬間は、まだ来ていない(原文は “we have all of the technological pieces, but we have not had the iPhone moment”)。

ここで大事なのは、「性能が足りない」とは言っていないことです。足りないものは、別のところにあると言っています。

そろったもの(性能の高いモデル・使える値段・誰でも触れる入口)と、まだ来ていないもの(毎日の仕事のやり方が変わること・これが無いと困るになること)を並べた図
アルトマンが「足りない」と言っているのは、右側のほう。

なぜ変わらないのか──レンタルビデオ店の話

アルトマンは、その理由を説明するのに古い例を出しています。ネットで映画が観られるようになったあとも、しばらくのあいだ人はレンタルビデオ店に通い続けた。それが自分には不思議でならなかった、という話です。

家で観られるほうが明らかに手軽なのに、それでも店まで歩いていく。便利だから乗り換える、とは限らないということです。

そして彼は、こうまとめています。行動を変えるのは、技術をつくっている人間が思っているよりずっと難しい(“changing behavior is just much harder than the tech nerds realize”)。

日本の数字が、同じことを言っている

これは遠い国の話ではありません。日本には、この「変わらなさ」がそのまま出ている数字があります。

日本は一人で使っているのが62.1%で日米独3か国で最多、仕事の流れに入っているのは13.1%で3か国で最少
個人で使う割合はいちばん高いのに、仕事の流れに入っている割合はいちばん低い。

一人で触ってみた人は、3か国のなかでいちばん多い。ところが、それが仕事のやり方の中に入っている割合は、いちばん低い。道具は行き渡ったのに、やり方は変わっていないという形です。この落差の詳細と、うまくいっている会社が何を先にやっていたかは、日本はAIを一人でいちばん使っている。仕事の流れに入っているのは13.1%にIPA『DX動向2025』の一次資料をあたって書いています。

では、何をすればいいのか

ここで「新しいAIツールをもう一つ入れる」と考えると、たぶん同じところに戻ります。道具はもう足りているというのが、アルトマンの言っていることだからです。

やることは逆で、道具を増やすのをやめて、いまのやり方を一つだけ変える。たとえば「時間のかかる調べものは、朝いちばんにAIへ投げてから席を立つ」。新しいアプリは要りません。変えるのは順番だけです。

もう一つ、こちらの側にも直せることがあります。AIの答えが分からなくて、そのまま閉じてしまうという止まり方です。これは使う側の問題ではなくAIの癖なのですが、分からなかった一語だけを返すと、そのあとの説明が変わります。

作っている本人が「行動を変えるのは難しい」と言っています。進んでいないとしても、それはあなたの根気の問題ではありません。

動画でも同じ話をしています

ずんだもんとAIロボくんの会話で、この発言と日本の数字を追っています(2分51秒)。

出典

  • David Senra「Sam Altman, OpenAI」(2026年8月23日公開)https://www.davidsenra.com/episode/sam-altman——★ページに書き起こしは音声認識で作られており誤りを含む可能性があると明記あり
  • IPA『DX動向2025』(2025年6月公表)/対象=生成AIに取り組む企業(日本741社・米国397社・ドイツ364社)。数字の詳細はこちらの記事に整理しています
  • 写真=Wikimedia Commons “Sam Altman” by Village Global/CC BY 2.0

【編集メモ】この回で気をつけたのは、OpenAIを叩く記事にしないことでした。自分の商品について「まだ足りていない」と言うのは、売る側としては言わなくてよいことです。それと、日本の数字を「日本は遅れている」という形で使わないこと。個人で使っている割合はいちばん高いので、遅れているという読み方は事実に合いません。

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aigeek編集部

aigeek.biz 編集部。AIの最新動向を、一次ソースにあたって深掘りし、図解と動画でわかりやすくお届けします。記事の制作体制は「aigeek.bizについて」で開示しています。

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