宇宙にひとり取り残された整備士と、船のAIが、手元にある物だけで故障をひとつずつ直しながら地球へ帰る連続動画『ふたりで、帰る』。この記事は第9話の紹介です。本編は下の動画(2分)で見られます。
あらすじ(第9話)
太陽の嵐が過ぎたあと、三村が明日の噴射の向きを聞くと、船のAI・エビは「右」と答えました。けれど、地上と話せなくなる前に三村が紙に書き写しておいた予定には「左」と書いてあります。
エビには、自分の記憶の中の予定がいつも正しく見えます。どちらが正しいかを、自分の中だけでは決められません。地上にも聞けません。そこで三村は、エビに予定を一つずつ読み上げさせ、紙と一行ずつ照らし合わせていきます。
違っていたのは、一行だけでした。紙は嵐の前に書かれたもので、エビの記憶は嵐のあとのものです。間違っていたのは、エビのほうでした。
見どころ:嵐の粒は、AIの記憶も書き換える
宇宙を飛ぶ高いエネルギーの粒子が、コンピュータの記憶の部品に当たると、記憶の中の0と1が入れ替わることがあります。部品そのものは壊れず、中身だけが書き換わるので、外から見ても分かりません。
これは作り話の中だけのことではありません。1989年10月、太陽の大きな嵐が約6日続いたあいだ、地球をまわる通信衛星TDRS-1では、向きを決める装置の記憶で、いつもよりずっと多い243回の入れ替わりが観測されました。
第8話の最後で、エビの返事が少し遅れました。その理由が、この回で分かります。これまでの回はAIが人を助ける話が続きましたが、第9話では初めて、人がAIの間違いを見つけます。第6話で三村が「エビが止まっても、俺が読めるように」と書いた紙が、ここで役に立ちます。
最後に、エビがほかにも書き換わった所がないか記憶を見直すと、まだ開いていない記録が一つ見つかります。それが何だったのかは、次の回で描きます。
この動画について
この物語はフィクションです。映像と画像はAIで生成し、図は自分たちで作っています。声は三村がElevenLabs、エビがVOICEVOX(剣崎雌雄)です。音楽はSunoで作りました。台詞で言っている理屈は、次の資料で確かめました。
- NASA技術報告「The dependence of single event upset on proton energy (15-590 MeV)」(NTRS 19830036326・1982年):半導体の部品は、粒子を浴びると、ビットが反転する「ソフトエラー(単一事象反転)」を起こすことがある
- Croley ほか「Solar Particle Induced Upsets in the TDRS-1 Attitude Control System RAM During the October 1989 Solar Particle Events」(IEEE Transactions on Nuclear Science 42(5)・1995年):1989年10月19日から約6日続いた太陽の粒子の嵐で、通信衛星TDRS-1の姿勢制御装置の記憶に、異常に多い243回の反転が観測された
続きの第10話の紹介はこちらです。









