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「生成AIで月30万円」——そういう見出しを、たぶん一度は見たことがあると思う。
この記事を書くにあたって、その手の数字の根拠になっている統計を探した。総務省統計局、e-Stat、厚生労働省、中小企業庁、内閣官房、公正取引委員会、日本政策金融公庫。それから各プラットフォームの公式ヘルプとIR資料。
結論から言う。「生成AIを使った副業」の報酬相場を示すデータは、公的統計には存在しなかった。
副業をしている人の数(305万人)もフリーランスの数(209万人)も、基幹統計である就業構造基本調査にある。だが「AIを使ったかどうか」で切った収入は、どの公的統計も取っていない。
ただし、民間には断片がある。これは書いておかないとフェアではないので、先に出す。
民間には、断片だけがある
クラウドワークスは、自社の実契約データを公表している。2023年12月25日の発表によると、「生成AI関連の仕事を受注するワーカーの契約案件単価は、他の仕事を受注するワーカーの単価と比較して1.8倍」(対象期間2022年12月〜2023年11月)。職種別ではITエンジニア3.5倍、非IT技術者6.8倍、ビジネス職種3.3倍とされている。
フリーランス向けのFindyも、2026年1月の調査(n=265)で「『AIを活用してコードの50%以上を生成する層』の平均月単価は84万円前後となり、活用度の低い層(25%以下)と比較して約10万円高い」と報告している。海外ではUpworkが2026年7月に「AI関連の仕事をするフリーランサーは時給が34%高い」と公表した。
ここは正確に読んでほしい。これらは「AIを使う人は単価が高い」という比較であって、「AI副業でいくら稼げるか」ではない。しかもいずれもそのプラットフォーム内で仕事を得ている人だけの数字で、母集団は公表されていない。単価が高いのは、AIを使えるほどの技能がある人がそもそも高く売れているから、という順序かもしれない。倍率は「相場」ではない。
つまり、「生成AI副業の相場は月◯万円」と具体的な金額を書いている記事は、その数字がどこから来たのかを説明できない。公的な裏づけは無く、民間データも金額ではなく倍率だからだ。
では、この記事には何が書けるのか。確かめられることだけを書く。手数料は公表されている。規約も、税金の基準も、法律の考え方も公表されている。稼げる額はわからないが、稼いだお金がどれだけ引かれるかと、どこで足を踏み外すかは、はっきりわかる。
手数料は、思っているより引かれる
まず、いちばん見落とされるところから。報酬がそのまま手元に来ることはない。
クラウドワークスのワーカー側システム利用料は、タスク形式なら金額にかかわらず一律20%(システム利用料にも消費税がかかるため、実際に引かれるのは22%相当になる)。プロジェクト形式は帯ごとの段階制で、10万円以下の部分が20%、10万円超20万円以下の部分が10%、20万円超の部分が5%だ。加えて振込手数料が、楽天銀行なら税込100円、他行なら税込500円かかる。
ランサーズは方式を問わず契約金額(税込)の16.5%。2022年10月に、従来の最大20%から一律16.5%へ改定された。ココナラは通常サービスで22%(公式ガイドは税込か税別かを明記していない)。
noteは二段構えだ。まず購入者の決済手段によって事務手数料が変わり(クレジットカード5%、携帯キャリア決済15%など)、そこから引いた残りに対してプラットフォーム利用料が有料記事なら10%、定期購読マガジンなら20%かかる。振込手数料は1回270円。
Kindleダイレクト・パブリッシングは、ロイヤリティを35%か70%か選べる。ただし70%を選ぶと配信コストが差し引かれる(Amazonいわく平均で1部あたり0.06ドル、ファイルサイズで変動)。さらに70%が適用されるのは対象地域の読者への販売だけで、対象外の地域では35%になる。
YouTubeの広告収益は、通常動画で純収入の55%、ショートでクリエイター配分の45%がこちらに来る。
ここまでが、公式に書いてある数字だ。「1万円の仕事」は1万円ではない、というだけの話だが、5つの案件を並べて比べたことがある人は意外と少ない。

AI生成物を「受け入れない」場所が出てきた
次が、この1年でいちばん動いたところ。
PIXTAは、AI生成素材の取り扱いを停止した。2026年4月14日の告知で、新規受付は4月20日まで、すでに販売していたAI生成素材も5月22日で販売停止。公式の理由は「クリエイターが制作したコンテンツ」のほうが購入者の需要に合うと判断したため、というものだ(同社は「AIを活用した創作を否定するものではない」とも書いている)。
ここは時点に注意がいる。PIXTAは2025年7月にはAI利用のルールを整備していた。つまり1年前の記事を読むと「ルールを守れば売れる」と書いてあり、いまは売れない。この分野は、古い記事を参照すると事実が反転する。
一方でAdobe Stockは受け入れる。ただし条件があって、メタデータで「生成AIツールを使用して作成」のラベルを有効にすることが必須で、違反した場合はコンテンツの削除やアカウントの停止の対象になる。プロンプトやタイトルにアーティスト名・実在人物・架空キャラクターを含めることも禁止されている。
YouTubeにも線が引かれた。実在の人物が実際には言っていないことを言っているように見せる、実際の出来事や場所の映像を改変する、起きていない場面を現実のように見せる——この3つに当たる場合は開示が義務になる。逆に、明らかに非現実的な表現、アニメーション、台本づくりの補助、字幕生成、自分の声のクローンは開示不要とされている。繰り返し意図的に開示を怠ると、コンテンツ削除やパートナープログラム参加停止の可能性がある。
そしてもう一つ、量で押す戦略に直接効く変更がある。YouTubeは2025年7月、収益化ポリシーの名称を「繰り返しの多いコンテンツ」から「量産型のコンテンツ」に変え、「クリエイターならではの、率直な洞察や視点が追加されておらず、汎用的または独創性のないテンプレートを使用して作成され、大量生産されたような印象を与えるAI生成コンテンツ」は収益化の対象外だと明確にした。
クラウドソーシングは「隠すな」と言っている
AIを使うこと自体は、禁止されていない。
クラウドワークスのAIポリシー(2024年7月31日公開)は「ユーザーのみなさまがAIを利用してクラウドワークス上の業務を行うことは当社として禁止しておらず、受発注者間の取り決めに委ねております」と明記している。そのうえでワーカーに求めているのは、事前に利用可否をクライアントに確認することと、利用していることを意図的に隠さないことだ。クライアント情報など機密性の高い事項を外部ツールに入力・アップロードする際は「情報の取り扱いに留意してください」とも書かれている(これは禁止行為ではなく、ワーカーへの要請だ)。
ランサーズは、発注者がコンペで「デザイン」「ライティング」を募集する際に生成AIの使用許可・制限を選べる機能を2024年3月に入れた。AI使用の提案には【AIで生成】ラベルが付く。ココナラの現行ルールはもう少し広い。出品が禁止されるのはAIで生成したイラスト画像そのものに加え、それを素材として一部使用したコンテンツ(サムネイル画像・動画など)まで含む。一方で、AI生成の写真画像とAI生成の文章の記事は出品可能とされている。

20万円は「売上」ではない
税金の話。ここは取り違えている記事が本当に多い。
国税庁の説明では、1か所から給与を受けている人の場合、確定申告が必要なのは「各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える人」だ。
所得は、収入から必要経費を引いた額である。売上が25万円でも、経費が8万円あれば所得は17万円で、この基準には当たらない。逆に、売上が20万円ちょうどでも経費がなければ所得も20万円で、「超える」には当たらない。「20万円稼いだら申告」ではない。
もうひとつ条件がある。給与収入から所得控除(雑損・医療費・寄附金・基礎控除を除く)を差し引いた額が150万円以下で、かつ各種の所得金額の合計が20万円以下の人は申告不要、という規定も国税庁は示している。
そしてここが落とし穴だ。20万円以下でも、住民税の申告は別に必要になりうる。たとえば名古屋市は「市民税・県民税には、所得税のような申告の省略範囲はなく、原則としてすべての所得を申告する必要があります」と説明している。所得税の確定申告が不要イコール何もしなくていい、ではない。取り扱いは自治体によるので、住んでいる市区町村の案内を見てほしい。
就業規則は「法律で自由」ではない
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)第70条は「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と定めている。だがこれは厚労省が示す「例」であって、あなたの会社の就業規則そのものではない。「法律で副業は自由」とは書けない。
同条の第2項では、①労務提供上の支障がある ②企業秘密が漏洩する ③会社の名誉や信用を損なう、信頼関係を破壊する ④競業により企業の利益を害する——のいずれかに当たる場合、会社は禁止・制限できるとしている。この「副業・兼業」には雇用されるものだけでなく、事業主として行うものや請負・委託・準委任契約によるものも含まれる。
著作権——文化庁の文書は、お墨付きではない
ここがいちばん誤解されている。
文化審議会の「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)は、冒頭でこう断っている。「『考え方』それ自体は法的な拘束力を有するものではなく」。「文化庁が認めているから問題ない」という言い方は、成り立たない。
そのうえで、内容も副業側に都合のいい話ばかりではない。
まずAIが自律的に生成したものは著作物に当たらないとされている。「人が何ら指示を与えず(又は簡単な指示を与えるにとどまり)『生成』のボタンを押すだけで生成したもの」がこれに当たる。著作物になるのは、人が「道具」として使ったと認められる場合で、判断されるのは「創作意図」と「創作的寄与」だ。
ここで効いてくるのが次の指摘だ。いずれも「それ自体では効かない」という言い方をしている点に注意してほしい。
プロンプトが長ければいいわけではない——「長大な指示(プロンプト)でも、創作的表現に至らないアイデアを示すにとどまる指示であれば、創作的寄与の判断には影響しない」。試行回数そのものは効かない——「試行回数が多いこと自体は、創作的寄与の判断に影響しない」。たくさん出して選ぶことそのものも効かない——「単なる選択行為自体は創作的寄与の判断に影響しない」。
ただし、どちらにも続きがある。試行については「生成物を確認し指示・入力を修正しつつ試行を繰り返すといった場合には、著作物性が認められる場合もある」、選択については「通常創作性があると考えられる行為であっても、その要素として選択行為があるものもあり、こうした行為との関係についても考慮する必要がある」。禁止されているのではなく、それ単体では足りない、ということだ。
そして、いちばん重い一文。「生成AIの開発・学習段階で当該既存の著作物が学習されていた場合は、AI利用者が既存の著作物を認識していない場合でも、通常、依拠性があったと推認される」。
著作権侵害は「類似性」と「依拠性」の両方で判断される。依拠性とは、既存の著作物をもとに作ったかどうかだ。あなたがその作品を知らなくても、モデルが学習していれば依拠性は推認されうる。知らなかった、は通りにくい。
ただし逃げ道も示されている。「学習に用いられた著作物の創作的表現が、生成・利用段階において出力される状態となっていない」ことを利用者が主張・立証できれば、依拠性がないと判断される場合はあり得る、とされている。推認されるだけで、覆せないわけではない。
アフィリエイトを混ぜるなら、表示が要る
2023年10月1日から、ステルスマーケティングは景品表示法違反になっている。
ここで正確に押さえておきたいのは、規制の対象は広告主(事業者)であって、インフルエンサーなどの第三者は規制の対象ではないという点だ。ただし「事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイトサイトに当該事業者の表示であることを記載していない場合」は、はっきり違反類型として挙げられている。
消費者庁が「明瞭」と認める表示の例は、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章だ。ただし文言を置けば足りるわけではなく、部分的にしか書かない、冒頭に「広告」と書きながら文中で「第三者として感想を記載しています」と矛盾させる、長い動画の中間や末尾にだけ表示する——これらは不明瞭とされる。
「必ず稼げる」について、正直な数字
消費者庁は2025年6月26日、簡単な副業をうたって高額なサポートプランを契約させた事業者への注意喚起を出した。SNSのアンケート型副業広告から勧誘し、「このプランなら、月50万が当たり前になる」「儲けが出なければ返金保証がある」と告げていた事案で、消費者庁は「断定的判断の提供」にあたる行為を行っていたことを確認した、としている(消費者安全法にもとづく注意喚起であり、処分ではない)。
ただし、ここは正直に書く。情報商材の相談件数は減っている。国民生活センターの集計で2023年度6,256件、2024年度4,163件、2025年度2,623件。「情報商材トラブルが急増している」という書き方は、現在のデータでは正しくない(急増と発表されたのは2018年で、2017年度の数字についてだ)。ただしこの集計は2026年5月31日現在のもので、消費生活センター等からの経由相談を含まない。2025年度分はまだ積み上がる可能性がある。
それでもゼロではない。困ったときの窓口は消費者ホットライン188である。
結局、どう始めればいいのか
相場がわからない以上、「これをやれば月◯万円」とは書けない。書けるのは順序だけだ。
1. 勤務先の就業規則を先に読む。モデル就業規則ではなく、自分の会社のものを。届出が要るかどうかで、始め方が変わる。
2. 出す場所の規約を、始める前に読む。AI生成物を受け入れるか、ラベルが要るか、そのカテゴリは対象外でないか。PIXTAのように、去年と今年で方針が変わっている場所がある。
3. 手数料を引いた額で考える。16.5%から22%が引かれ、振込のたびに数百円が減る。「1万円の仕事」を額面で数えない。
4. AIを使ったことを隠さない。クラウドワークスが求めているのは、まさにここだ。隠していたことが後で分かるのが、いちばん失うものが大きい。
5. 経費を記録する。20万円の基準は所得(収入−経費)で決まる。領収書がないと、払わなくていい税金を払う。
わかっていないこと
この記事で書けなかったことを、正直に列挙しておく。
生成AI副業の報酬相場を示す公的統計は、探した範囲では存在しなかった。民間の公表データ(前述のクラウドワークス・Findy・Upwork)はあるが、いずれも自社プラットフォーム内の限定データで、母集団が公表されていない。クラウドワークス・ランサーズ・ココナラのワーカー収入分布(平均も中央値も)は運営が公表していない。KDPの平均ロイヤリティ収入もAmazonは公表していない。YouTubeのRPM(1,000再生あたりの収益)にも公式値はなく、公表されているのは分配率だけだ。「1再生◯円」という数字は、公式には存在しない。
noteについては数字が公表されているが、そのまま使うと誤解を生む。「売上トップ1,000人の平均1,160万円」は極端に偏った層の平均で、全体の中央値は非公表。「1,842円」は売上上位20%の記事の価格であって、誰かの収入ではない。
住民税の具体的な取り扱いは自治体ごとに異なるため、本記事では名古屋市の説明を例として挙げるにとどめた。ココナラのビデオチャット・電話相談の手数料率、KDPの70%が適用される価格帯の条件は、原本を確認できていない。
【編集メモ】
本記事は、クラウドワークス・ランサーズ・ココナラ・note・Kindleダイレクト・パブリッシング・Adobe Stock・PIXTA・YouTubeの各公式ページ、厚生労働省モデル就業規則(令和7年12月版)、国税庁タックスアンサー(令和7年4月1日現在法令等)、文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)、消費者庁ステルスマーケティング運用基準(令和5年3月28日)、国民生活センターの公表データにもとづいて構成しました。情報は2026年7月31日時点のものです。
文化審議会の引用は概要版(令和6年4月・文化庁著作権課)の文言によっています(本体は言い回しが異なります)。報酬相場については、公的統計を探した範囲で確認できなかったため、「いくら稼げるか」の目安を一切示していません。民間の公表データ(クラウドワークス2023年12月25日発表・Findy 2026年1月調査・Upwork 2026年7月公表)は本文に明記しましたが、いずれも各社のプラットフォーム内の数字であり、副業全体の相場ではありません。個人の「月◯万円達成」という発信は、本記事では数字として採用していません。文化庁の「考え方」は同文書自身が法的拘束力を持たないと明記しており、本記事もそのように扱っています。note公式ヘルプ・Adobe Stock公式ヘルプ・ココナラ現行ヘルプの一部は当方からの直接取得ができず、同一公式ページの内容を経由して確認しています。この記事はアフィリエイトリンクを含みません。



















