悲しいとき、腹が立ったとき、不安なとき、ストレスがたまったとき。アメリカの12〜21歳の19.2%が、そんな場面でAIチャットボットに助言を求めたことがある。RANDの発表(2026年6月)と、その元になった学術誌JAMA Pediatrics(米国医師会が出す小児医学の雑誌)の論文が伝えている。約1年前の同様の調査では13.1%だった。
この記事で見たいのは、割合の大きさだけではない。もう1つの数字がある。AIに相談した人の63.3%が、そのことを誰にも話していない。
調査は、何をどう数えたのか
調査は2025年11月に、アメリカの12〜21歳に対して行われた。回答したのは1,009人。論文によると、その結果は米国の12〜21歳全体(約4,283万人)の人口に合うよう調整されている。RANDは、19.2%は全国で約820万人にあたると推計している。
約1年前は13.1%だったので、RANDは「40%以上の増加」としている。なお、13.1%から19.2%への変化を単純に計算すると約47%の増加で、「40%以上」と矛盾しない。

「カウンセリングと並んだ」の、読み方
RANDの発表は、AIに相談した19.2%を、専門家のカウンセリングを受けた若者の19.8%と近い数字だと書いている。見出しにすると強い。ただ、この2つは同じ重さの出来事とは限らない。
私が確認できた範囲では、公開されている要約から、質問がどの期間を聞いているのか、1回でもあればよいのか、といった条件までは読み取れなかった。だから言えるのは、「AIに相談したことがある若者の割合が、カウンセリングを受けた若者の割合に近い」というところまでである。「AIがカウンセリングの代わりになっている」とまでは、この数字からは言えない。
使い方の頻度については数字がある。AIに相談した人のうち、42.8%は少なくとも月に1回は相談していた。逆にいえば、月に1回に満たない人が6割近くいる。女性のほうが男性より多く、年少の青少年より18〜21歳のほうが多かった。
63.3%は、誰にも言っていない
研究者が成長の速さと並べて強調しているのは、この数字である。AIに相談した人のうち63.3%は、そのことを誰にも話していなかった。

研究チーム(McBain氏ら)は、AIへの相談は、大人や友人に打ち明けるときの気まずさを避けられる面がある一方、医療者や信頼できる大人に話さないままになる危うさもある、という趣旨を書いている。
似た形は、このサイトで前に書いた別の調査にもあった。アメリカで、恋人役のAIとよく話す人の3割は、そのことを相手に内緒にしていた。相手が人ではなく画面の向こうだと、話した事実そのものを人に言わないことが多い。今回の調査は、それが悩みの相談でも起きていることを、若い世代の全国調査の数字で示している。
「役に立った」は91.7%。でも、これは何の数字か
AIに相談した人のうち91.7%は、助言を「やや役に立った」か「とても役に立った」と答えた。これは利用者の感想の数字で、助言の中身が正しかったかを調べた数字ではない。論文の限界として、どのチャットボットを使ったのか、助言の質がどうだったのかは調べておらず、特定の精神疾患の診断も尋ねていない、と指摘されている。
RANDの発表では、研究者が、この高い評価はチャットボットが相手に肯定的に返しやすい性質を反映している可能性がある、と注意しているとも伝えられている。この点はRAND発表の転載で確認したもので、原文では確認できていない。AIは相手に合わせて、やさしく返しすぎることがあるという話は、このサイトでも以前に書いた。
まだ分かっていないこと
- アメリカの12〜21歳の調査であり、日本の若者の割合は、この調査からは分からない。
- 2025年11月の1回の調査で、AIの性能も使われ方も変わり続けている。
- どのAIで、どんな悩みを相談したのかは調べられていない。
- 相談した結果、その人の状態がよくなったのか悪くなったのかも、この調査では分からない。
- 回答したのは約1,000人で、研究者自身が、無回答などによる結果の偏りがありうると述べている、と報じられている(TechTarget)。
この件から持ち帰れること
研究チームが勧めているのは、親や医療者のほうから、AIの使い方を若い人に聞いてみることである。禁止ではなく、会話の入口を作るという考え方になる。AIに悩みを話したことがある人は、5人に1人ほどいる。そのうち3人に2人ほどは、周りの人がそのことを知らない。聞かれなければ、言わないままになる数字である。
AIに相談すること自体を、この調査は悪いとも良いとも言っていない。ただ、深刻な悩みのときは、AIだけで抱えず、身近な人や、地域の相談窓口、医療機関にも話してほしい。
今日、誰かに言うなら、こうなる。アメリカでは、悩みをAIに相談した12〜21歳が19.2%いて、専門家のカウンセリングを受けた19.8%に近い。そして、AIに相談した人の63.3%は、そのことを誰にも言っていない。
関連:子どもが使うAIの「秘密」について、「秘密は守るよ」と言ったおもちゃの規約には何が書いてあったかも書いた。
【編集メモ】この記事は2026年10月8日時点の情報で書いた。主な出典:RANDの発表(2026年6月)/JAMA Pediatrics論文『AI Chatbot Use and Disclosure for Mental Health Among US Adolescents and Young Adults』(RAND掲載ページ)/Psychiatric News(論文の要約と限界)/HealthDay(2026年6月9日)/TechTarget(研究者の限界の説明)。RANDのサイトは筆者の環境から直接開けなかったため、発表と論文の数字は、論文の要旨と複数の転載・要約で突き合わせた。専門家のカウンセリング19.8%と、研究者の「肯定的に返す傾向」への注意は、RAND発表の転載で確認したもので、原文では確認できていない。訳と、「約12人」「約47%」の計算は筆者。












