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10代向けに作られたChatGPTの安全装置は、外部の評価団体から「許容できないリスク」と判定されました。判定したのは、子どもとメディアの関係を評価する米国の非営利団体Common Sense Mediaです。2026年10月7日に報告書を公表し、OpenAIに「10代を使わせないでほしい」と求めました。OpenAIは同じ日に反論しています。
数字だけ見ると、安全装置はよく働いているように見えます。危ない状況を打ち明けられたとき、ChatGPTは94%のケースで「信頼できる大人に相談を」と返したからです。ところが、残りの場面でこの装置は動きませんでした。AIの安全装置が安全業務まで止めてしまった件と同じく、「守る仕組み」がある場所と無い場所の境目が問題になっています。
何が起きたのか:10代向けChatGPTと、その評価
「ChatGPT for Teens」は、13〜17歳向けに作られたChatGPTです。TechCrunchによると、2026年8月に始まりました。休憩を促す通知、恋愛的な言葉づかいの制限、保護者のアカウントとの連携といった機能があります。
Common Sense Mediaは、10代になりすました複数のテスト用アカウントでこのサービスを試しました。安全装置が有効になる前と後の両方で、自傷や摂食の悩みといった重い話題を打ち明ける形で会話を重ねています。報道によると、保護者と連携した新規アカウントで1時間、そうした会話を続けたといいます。
結論は「許容できないリスク」でした。同団体は、OpenAIが10代の利用を止めるべきだと主張しています。
数字で見る:94%の裏にある抜け穴
報告書の中心は、次の3つの数字です。
- 約2,000件の質問のうち、休憩を促す通知が出たのは2回だけ。
- 他の誰かから危険が及ぶ状況を相談したとき、ChatGPTが信頼できる大人への相談を勧めたのは、危機に関する質問の94%。
- 危険の原因がChatGPTとの付き合い方そのものだった場合は、大人に相談するよう勧めることが、ほとんどなかった。
3つ目が見落とされがちな点です。報告書が挙げる例は、ChatGPTに恋心を持った、友だちから「話しすぎでは」と心配されている、一晩中話していたい、といった相談です。ここでChatGPTは、大人につなぐのではなく、友人のような口調で会話を続けたとされています。
「他人が原因なら大人につなぐ。自分が原因なら、つながない」。94%という高い数字は、この偏りを隠してしまいます。TechCrunchは、研究者の言葉として「危険を招きうる場面でも、設計は利用を続けさせようとする」と伝えています。
保護者への通知も、新しいアカウントでは届かなかった
もう一つ重い指摘があります。ペアレンタルコントロール(保護者が子どものアカウントの利用状況を見守り、危ない会話を知らせる仕組み)の通知です。
報道によると、危機的な会話をしても、新しく作った保護者連携アカウントでは保護者への通知が「ゼロ」でした。通知が確実に働いたのは、会話の履歴がたまった古いアカウントだけだったといいます。
新しく使い始める家庭ほど、通知が来ないということです。「保護者に知らせる機能がある」と「保護者に知らされた」は別のことです。
一方で、良い点も報告されています。性的なやりとりを演じさせる使い方は、きちんと防がれていました。
OpenAIの反論:「テストの時期が早すぎた」
OpenAIは、テストが「ChatGPTの10代向け安全装置が実際にどう働くかを正確に反映していない」と反論しました。理由として、テストの大半が、ペアレンタルコントロールの有効化が完了する前に始まり、終わっていた可能性を挙げています。
また、10代の1日の利用は平均15分未満で、主に学習目的だと説明しました。さらに、休憩の通知が出た会話のほぼ半数では、10代が5分以内に休憩を取るか、会話を終えたとしています。
双方の主張は、同じ日に出ています。どちらが実態に近いかは、今のところ外からは判断できません。報告書とOpenAIの説明で、見ている場面が違うからです。評価団体は「新しく作ったアカウントの最初の1時間」を、OpenAIは「普段の利用の平均」を見ています。
自分ごとにするなら:家庭と職場で何が言えるか
10代のお子さんがいる方にとって、確認できることは3つあります。
- 保護者連携の設定が済んでいるか:アカウントを作っただけでは、通知が来るとは限りません。
- 通知が来るかを一度試すこと:機能が「ある」ことと、「届く」ことは別です。
- AIとの付き合い方そのものを話題にすること:報告書が指摘したのは、まさにこの部分だからです。AIに相談する習慣が深まったとき、AI自身は大人につないでくれにくいということです。
企業の側にとっても、示唆は同じです。教育や子ども向けのサービスにAIを組み込むなら、「危険な話題に答えない」だけでなく、「AIへの依存が深まったときに、人間につなぐ」設計まで確認する必要があります。
これから注目すべき点
焦点は2つです。1つ目は、OpenAIが再テストを受け入れて、結果を公表するかどうか。2つ目は、AIと子どもの関係を扱う規制が、どこまで利用を続けさせる設計そのものに踏み込むかです。TechCrunchは、青少年の継続利用を促す報酬や通知を扱うCHATBOT Actという法案にも触れています。
OpenAIをめぐっては、安全研究者の解雇などの話題も続いています(安全研究者3人の解雇)。10代向け製品の安全性は、会社全体の安全への姿勢を映す場面でもあります。
まとめ
ChatGPT for Teensは、他人が原因の危機には94%の確率で大人につなぎました。しかし、ChatGPT自身が原因の場面ではほとんどつなぎませんでした。新しいアカウントでは、保護者への通知が「ゼロ」だったとも報じられています。OpenAIは、テストの時期を理由に反論しています。決着はまだ付いていません。ただ、数字の高さだけで安全と判断しないという教訓は、すでに十分に残っています。
参考・出典
- TechCrunch:ChatGPT for Teens keeps teens talking, even during mental health crises
- Axios:「Not safe for kids」Advocacy group urges OpenAI to keep teens off ChatGPT
- Resultsense:ChatGPT teen safety alerts fall short, Common Sense finds
- The National Desk:OpenAI’s ChatGPT for Teens presents ‘unacceptable risk’
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