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中国のAI企業Zhipu AI(現Z.ai)が、米国製半導体を一切使わず中国製チップのみで稼働する1ギガワット級のデータセンターを完成させたと、Bloombergなど複数の海外メディアが2026年7月20日までに報じた。同社はこの拠点で主力の大規模言語モデル「GLM」シリーズを訓練しているとされる。報道を受けて香港市場に上場する同社株は、前週の40%超の下落から一時19〜37%急伸するなど大きく反応した。米国が半導体輸出規制を強化するなか、中国のAI企業が自前技術だけで大規模インフラを構築できることを示した事例であり、日本を含む各国の半導体戦略にも波紋が広がっている。
1ギガワット規模のデータセンターとは何か
Bloombergが匿名の関係者の話として伝えたところによると、Z.aiはこの1ギガワット級データセンターの一部をすでに稼働させており、1万個超のチップで構成する計算クラスターを複数運用しているという。1ギガワットは一般家庭約75万世帯分の電力に相当する規模で、中国のAI企業が単独で立ち上げた拠点としては最大級とされる。データセンターの所在地や建設費用、着工から完成までの期間について、情報源は明らかにしていない。
チップメーカーは非公表もHuawei Ascendが濃厚
今回の報道では、データセンターに搭載された国産チップの具体的なメーカー名は明かされていない。ただし、Z.aiは6月にリリースしたモデル「GLM-5.2」について、米エヌビディア(Nvidia)製品を一切使わず、ファーウェイ(Huawei)の「Ascend」シリーズのAIアクセラレータのみで訓練したと発表しており、公開重み(オープンウェイト)モデルのランキングで公開から1週間ほどでトップクラスに達したとされる。こうした経緯から、今回のデータセンターでもAscend系チップが中心になっているとみる向きが多い。
エンティティリスト指定と米国の輸出規制
Z.aiは2025年1月以降、米商務省の禁輸対象リスト「エンティティリスト」に掲載されており、Nvidia製GPUへの合法的な調達ルートを絶たれている。米国は先端半導体の対中輸出規制を段階的に強めてきたが、Z.aiが今回、規制の抜け道を探すのではなく国産チップのみでギガワット級インフラを立ち上げたことは、規制の実効性そのものに一石を投じる出来事といえる。Anthropicも中国発のAIツールをめぐる「バックドア」懸念に反論するなど、米中のAIをめぐる緊張は複数の局面で表面化している。
もっとも、性能面での代償は無視できない。中国製アクセラレータは電力あたりの演算性能でNvidiaの最新世代「Blackwell」系チップに劣るとされ、同じ1ギガワットの電力を投じても、Nvidiaシステムで構成した拠点に比べると実際に使える学習演算量は目減りする可能性が高い。量で質の差を補う構図は、中国のAI開発戦略全体に共通する特徴でもある。オープンソースのAIモデルをめぐっては、DeepSeekの躍進が伝えられた後もAnthropicの支出が大きく落ち込まなかったとされる例もあり、中国製モデルの性能向上が直ちに欧米大手の事業を切り崩すとは限らない点にも留意が必要だ。
香港市場は株価急伸で反応
Z.ai株は今回の報道を受けて香港市場で急伸した。南華早報(South China Morning Post)によると、株価は一時37%上昇して1,219香港ドル(約155米ドル)まで回復し、直前の1週間で40%以上下落していた分をほぼ取り戻した。別の報道では7月21日の日中値動きで19%超上昇し、1,000香港ドル台を回復したとも伝えられている。同社は香港での新規株式公開(IPO)と追加増資により数十億ドルを調達済みで、2026年中に年間経常収益10億ドルを達成する目標を掲げているという。
日本のAI半導体戦略への示唆
今回の一件は、日本のビジネスパーソンにとっても他人事ではない。中国発の低コストAIモデルが台湾の半導体受託生産最大手の株価まで揺さぶったMoonshot「Kimi K3」の市場反応と合わせて見ると、Nvidia依存のサプライチェーンが唯一の勝ち筋ではなくなりつつある構図が浮かび上がる。中国が「使えるものを自国製でとにかく量産する」路線を選んだことで、日本企業にとっては半導体・電力インフラ・データセンター建設といった周辺需要が中国国内で内製化され、輸出機会が狭まるリスクがある一方、Nvidia一極集中のリスク分散という観点では選択肢の多様化が進むとも言える。
韓国が政府主導でサムスン電子やSKハイニックスを巻き込み5760億ドル規模のAI半導体計画を打ち出したのも、まさにこの流れへの対抗策だ。日本は素材・製造装置で強みを持つものの、AIアクセラレータの設計・量産で主導権を握る企業はまだ育っていない。米中双方が自国製シリコンでのAI覇権競争を進める今、日本企業がどの陣営のサプライチェーンにも過度に依存しない立ち位置を早期に定める必要性は、これまで以上に高まっている。
Nvidia側もこうした中国勢の動きを座視しているわけではない。GPUの買い戻し保証やクラウド収益の取得といった顧客囲い込み策を相次いで打ち出しており、Nvidia依存から抜けようとする中国勢と、抜けさせまいとするNvidiaの綱引きが同時進行している。日本企業がAIインフラ投資の意思決定をする際は、どちらの陣営が最終的に優位に立つかではなく、両陣営が並走する状態がしばらく続く前提で、調達先を一本化しないポートフォリオ思考を持つことが実務上のリスク管理になる。
今後の展望
Z.aiは中国科学院からスピンオフした半導体企業「XCore Sigma」の買収も完了しており、異種混合コンピューティング(ヘテロジニアスコンピューティング)やコンパイラ、推論エンジンの内製化を進めているとされる。ファーウェイのAscend次世代品とみられる「950」シリーズも年後半に量産が見込まれており、今回のデータセンターがその実証の場になっている可能性がある。米国の輸出規制がさらに強化されれば、Z.aiのような国産チップ路線を選ぶ中国AI企業は今後も増えるとみられ、性能格差をどこまで縮められるかが焦点になる。
まとめ
Zhipu AI(Z.ai)が米国製半導体ゼロで1ギガワット級データセンターを稼働させたことは、輸出規制下でも中国が自前技術で大規模AIインフラを構築できることを示した。性能面の課題は残るものの、日本企業もサプライチェーンの分散と自社の立ち位置を見直す局面に入っている。

















