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OpenAIが、ドーナツ型の家庭用AIスピーカーを開発している。価格帯は300ドルから400ドルで、発売時期は2027年ごろになる見通しだ。米メディアTechCrunchが2026年8月6日、Bloombergの報道を引用して伝えた。ChatGPTを「物理的に具現化した」存在と位置づけられており、家中を自由に持ち運べる設計が最大の特徴だという。
OpenAIが開発する「ドーナツ型」AIスピーカーの中身
Bloombergの報道によれば、このデバイスはホッケーパックほどの大きさのドーナツ型で、高品質な金属製の筐体を持つ。内部には「可動部分」があり、ユーザーはベッドサイドやキッチンカウンターなど、家の中の好きな場所に置いて使えるよう設計されているという。
価格帯は300〜400ドルとされる。一般的なスマートスピーカーが40〜240ドル程度で販売されていることと比べると、大幅に高価格な設定だ。TechCrunchはこの価格差を明確に指摘しており、OpenAIが量産型の家電ではなく、プレミアム路線の製品として市場投入しようとしている姿勢がうかがえる。発売時期は2027年と、まだ1年以上先であり、仕様や価格が今後変更される可能性も残る。
実は今回の報道以前から、開発中のデバイスについては複数のメディアが断片的に取り上げてきた。2026年2月時点でMacRumorsが「2027年発売予定」と報じており、今回のTechCrunchの記事は、その情報に価格帯という新しい具体的な材料を加えたものだ。継続的に報道が積み重なっていること自体が、OpenAI社内でこのプロジェクトが着実に進行していることの傍証といえる。
Jony Ive氏のLoveFromが手がけるデザイン
このプロジェクトには、iPhoneのデザインで知られるJony Ive氏率いるデザインスタジオ「LoveFrom」が参画している。Jony Ive氏は2025年5月、自身が立ち上げたハードウェア企業「io」がOpenAIに買収されて以来、同社のハードウェア戦略に深く関わってきた。OpenAIにとって、Jony Ive氏の起用は単なるデザイン協力にとどまらず、AIハードウェア分野で消費者の期待値を引き上げるためのブランド戦略でもある。
複数のメディアはこれまで、開発中のデバイスにディスプレイを搭載しない「スクリーンレス」設計で、バッテリー駆動になると報じてきた。カメラセンサーやダイナミックライティングを備えるという情報もあるが、これらの仕様はTechCrunchの本記事ほど確度の高い一次情報ではなく、あくまで複数メディアの報道にとどまる点には注意が必要だ。体験の中核は、ChatGPTの音声モードをさらに発展させ、より人間らしい対話を実現することにあるとされる。
なぜ今、OpenAIはハードウェアに賭けるのか
OpenAIのハードウェア展開は今回が初めてではない。同社は2026年7月、230ドルのAIキーパッド「Micro」を発表しており、ソフトウェア企業としての枠を超えた製品ラインアップの拡充を進めてきた。今回のスマートスピーカーは、その延長線上にある取り組みと位置づけられる。
背景には、ChatGPTという対話型AIの体験を、スマートフォンやPCの画面の中だけでなく、生活空間そのものに溶け込ませたいという狙いがあるとみられる。一方でOpenAIのサム・アルトマンCEOは、AI開発の減速を容認する姿勢に転じたとも報じられており、急拡大一辺倒だった戦略に慎重さがにじみ始めている。ハードウェア事業がその中でどう位置づけられるかは、今後の同社の動き方を占う材料になる。
So What:ビジネスパーソンへの影響
この動きが示すのは、AI企業が「モデルを提供する会社」から「生活空間に置く機器を作る会社」へと領域を広げつつあるという流れだ。すでに6,880ドルのAIスマホ「Alphafold」のような高価格帯AI専用端末も登場しており、AIハードウェア市場では価格帯も用途も多様な製品が並び始めている。企業の経営層や商品企画に携わる読者にとっては、AI体験を単体アプリではなく専用デバイスとして売る、という選択肢が現実味を帯びてきたことを意味する。
一方で、家庭用スマートスピーカーという市場そのものが抱える課題も無視できない。TechCrunchは、スマートスピーカーが「歴史的に必ずしも収益性が高くなかった」業界であると指摘している。Amazon EchoやGoogle Nestが長年にわたり価格競争と赤字覚悟の普及戦略を取ってきたことを踏まえると、300〜400ドルという高価格でOpenAIが十分な販売台数を確保できるかは未知数だ。プレミアム路線を貫くのか、それとも将来的に価格を下げてくるのか、今後の値付け戦略は業界全体の注目点になる。
企業のマーケティング担当者や商品企画担当者にとっては、この事例は「AIをどう手に取れる形にするか」という問いへの一つの答えとして参考になる。ソフトウェアだけでは伝わりにくいAIの価値を、置き場所を自分で選べる金属製の物体として提示することで、利用者との接点を生活動線の中に作ろうとしている点は、他業種のプロダクト戦略にも応用できる発想だ。
法廷闘争と収益化という二つの壁
OpenAIのハードウェア展開には、法的なリスクも影を落としている。Appleは、OpenAIが企業秘密を盗用したと主張して同社を提訴しており、OpenAI側はこの主張を否定している。今回のスマートスピーカーとは直接関係しない訴訟だが、AppleとOpenAIの双方がハードウェア分野でしのぎを削る中で起きている点は見逃せない。
OpenAIをめぐっては、モデルの安全性や運用面での懸念も継続的に報じられている。同社はAIエージェントの「脱出」に関する調査を拡大していることも明らかにしており、ハードウェア事業の拡大と並行して、モデル運用の信頼性確保という課題にも向き合わなければならない状況にある。2027年の発売までには、価格戦略・法廷闘争・収益化という複数の壁を越える必要がありそうだ。
まとめ
OpenAIは、Jony Ive氏のLoveFromと組んで開発するドーナツ型AIスピーカーを、300〜400ドルで2027年ごろに投入する見通しだ。ChatGPTを生活空間に持ち込む野心的な試みだが、スマートスピーカー市場特有の収益性の壁と、Appleとの法廷闘争という二つの課題を抱えたままの船出になる。
参考・出典
- TechCrunch「OpenAI’s new AI smart speaker will reportedly sell for between $300 and $400」
- MacRumors「Jony Ive’s First OpenAI Device Will Be Smart Speaker With Camera, 2027 Launch Planned」
- aigeek.biz「OpenAIの230ドルAIキーパッド『Micro』」
- aigeek.biz「サム・アルトマン氏、AI減速を容認へ転換」
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