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AWS(アマゾン ウェブ サービス)のCEOマット・ガーマン氏は2026年10月2日、データセンター計画で自治体と結んできたNDA(秘密保持契約)をやめると発表した。あわせて、地域に5年で10億ドルを出す基金「Built Together」も打ち出した。ところが同じ発表で、ガーマン氏は「反対が広がれば米国はAI競争に負ける」とも警告している。歩み寄りと牽制が同じ日に出たためか、Ars Technicaは見出しで、この計画が「さらなる批判を呼んだ」と報じている。
Amazonがデータセンターで約束した内容
NDAとは、「契約の中身を外に漏らさない」と約束する契約だ。データセンターの計画でこれを自治体と結ぶと、自治体の職員は住民に計画の中身を話せなくなる。AWSは、政府機関や自治体とのデータセンター案件で、このNDAを使わないと約束した。
約束はそれだけではない。報道によると、Amazonは次の内容も挙げている。地域の電気代が上がらないよう、十分な電力料金を払う。新設する拠点には、低排出のバックアップ発電機(停電時に動かす非常用の発電機)を置く。エネルギーと水の使用量を毎年公開する。さらに2030年までに「水ポジティブ」を目指す。水ポジティブとは、事業で使う水よりも、地域に戻す水のほうを多くする目標のことだ。
The InformationとArs Technicaは、この発表を同じ10月2日に報じた。GizmodoやGeekWireなども続いている。
Built Together 10億ドルの中身は何か
基金「Built Together」は5年で10億ドル。使い道は地域が決める。対象は教育、職業訓練、エネルギー補助だと報じられている。
細目はHoodlineだけが伝えている。同媒体によると、約30万人分のコミュニティカレッジ(地域の短期大学)の費用、職業認定センターを2028年までに3か所から25か所へ増やす計画、3万戸を超える住宅の省エネ改修、300の学校や公共建築物への支援が含まれると報じられている(Hoodline)。他の媒体では確認できていないため、数字は報道の範囲で受け取る必要がある。
10億ドルの大きさは、期間をそろえると見えやすい。5年で10億ドルを単純に5で割ると、1年あたり約2億ドルになる。一方、Amazonの年間の設備投資計画は約2,200億ドルとGizmodoは伝えている(Gizmodo)。1年同士で比べると、基金は設備投資計画の0.1%弱にあたる。環境団体も、税の優遇に比べて基金は小さいと指摘している。
「100以上のモラトリアム」警告が同じ日に出た
引っかかるのは、この発表が約束だけで終わらなかった点だ。Gizmodoによると、ガーマン氏は「100以上のモラトリアムが検討されている」と述べた。モラトリアムとは、新しいデータセンターの建設や許可を一定期間止める措置を指す。それが成立すれば、米国は「この競争で負けるチケットを自分で書いている」ことになる、という発言だ(報道の訳)。
同じ報道によると、ガーマン氏は海外の勢力がデータセンターへの懐疑論を意図的に広めている可能性にも触れた。つまりAmazonは、秘密の契約をやめて地域に10億ドルを出すと伝えた同じ場で、反対が広がること自体を米国の競争力の問題として語った。
地域に歩み寄る内容を読んだ人は、反対する側の言い分を聞く姿勢の表れだと考えるだろう。実際の発表には、反対運動を牽制する言葉も入っていた。
データセンター反対運動の規模は2通りに数えられている
警告の背景には、実際に止まっている計画の数がある。ただし数え方は報道ごとに違う。期間と集計元が別なので、混ぜずに並べる。
Hoodlineなどは、2026年の第1四半期だけで75件を超える計画、約1,300億ドル分が中止または延期になったと伝えている。Gizmodoは、監視団体Data Center Watchの集計として、2026年上半期に120件を超える計画、約2,000億ドル分が阻止または延期されたと報じた。第1四半期と上半期では期間が違うため、二つの数字は矛盾しない。
世論の側にも材料がある。Pew(ピュー)の調査として、米国人の60%が自宅の近くにデータセンターが建つと落ち着かないと答えたと報じられている。なおこれは検索結果の要約で確認した数字であり、調査の原典は確認できていない。
NDAをやめても残る疑問と批判
批判は基金の大きさだけに向かっていない。環境団体のStand.Earthは、米国最大の気候汚染源になるとされる発電所に、今回の発表が対処していないと批判した。Hoodlineは、第三者の不動産業者や請負業者を通したNDAが続く可能性があるとしたうえで、その扱いは不明だと伝えている。自治体と直接結ばなくなっても、計画の秘密が守られる経路が残るかどうかは、発表からは読み取れない。
流れで見ると、Amazonの発表は先行する動きの後に出ている。Hoodlineによると、Microsoftは2026年初めにNDAをやめた。ペンシルベニア、マサチューセッツ、デラウェアの3州は、NDAを制限する命令や指示を出している。9月29日には下院司法委員会の民主党が、Amazon、Google、Meta、Oracleのこの慣行の調査を始めた。Gizmodoは、ジェイミー・ラスキン議員が開示を求めたと報じている。
バックアップ発電機をめぐる争いもすでに起きている。Hoodlineが挙げる例では、ノースカロライナ州リッチモンド郡に、100億ドル規模で最大21棟のデータセンターキャンパスが計画され、バックアップ発電機は約600台になる。9月には環境団体が、大気の許可に法的な異議を申し立てた。Amazonが「低排出のバックアップ発電機」を約束した背景には、こうした現場の争いがある。
AIの計算力を左右する、電力と地域の合意
AIの学習や運用に使う計算は、データセンターで行われる。そのデータセンターが、電力の確保に加えて、地域の同意という別の壁に直面している。止まった計画が数十件から百件規模で報じられていることが、その証拠だ。
電力側の動きは、本サイトでも追ってきた。SpaceXがAI向けの電力不足の解消に向けてタービン刃の工場を建てる話は、電気をどう作るかの問題だった。Googleがフィンランドに150億ドルを投じるAIインフラ計画は、どこに建てるかの問題だった。今回のAmazonの発表は、そのどちらとも別の、建てる場所の住民とどう合意するかの問題である。
読者にとっての意味は、AIサービスの裏側で、建設の可否が企業の資金力だけでは決まらなくなっている点だ。情報を公開する、電気代を守る、水の使用量を毎年示す。Amazonがこれらを約束した事実は、地域が求めているものが何かを示している。一方で警告も同時に出た。約束がどこまで守られるかは、毎年の公開データで確かめられる。
まとめ
Amazonは、NDAの廃止と10億ドルの基金を約束すると同時に、反対運動を米国のAI競争への脅威と位置づけた。約束の実行は、毎年公開されるエネルギーと水の使用量で追える。
参考・出典
- Ars Technica:Amazon’s $1B plan to combat data center backlash draws more backlash
- Gizmodo:Amazon is making concessions to data center critics and warning them not to get in the way
- Hoodline:Amazon drops data center secrecy deals, pledges $1B
- The Hill:Amazon investment in data center communities, energy and water costs
- GeekWire:Amazon pledges $1B to data center communities
- The Information:Amazon pledges to give up NDAs, give back $1 billion
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