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AIモデルは難関の学術試験や複雑なコーディング問題で人間を上回る成績を出すようになった。ところが、子供でも数秒で解けるような単純なパズルになると、同じAIが軒並みつまずく。米MIT Technology Reviewが2026年8月26日に報じた調査は、この奇妙な食い違いを具体例とともに突きつけている。中には、最良のAIモデルでもわずか18%しか正解できなかったテストもあった。AIの『賢さ』が人間の賢さとは別の種類のものであることを示す事例として、ビジネスの現場でAIに何を任せてよいかを考える材料になる。
人間には簡単なのに、AIが引っかかる問題とは
MIT Technology Reviewが取り上げたのは、学力試験のような難しい知識問題ではない。物を回転させて見え方を想像する、簡単な嘘つきクイズを解く、文章題の状況を頭の中で整理する——いずれも人間なら直感的に、あるいは少し考えれば解けるタイプの問題だ。ところが最新のAIモデルにこうした問題を解かせると、驚くほど頻繁に間違える。記事はこの現象を、複数の研究チームが実施した異なる種類のテストを横断して紹介している。
空間認識と論理パズルで浮き彫りになる弱点
代表例の一つが「Mental Rotation(心的回転)」と呼ばれるテストだ。3D の物体を別の角度から見たときにどう見えるかを当てる、空間認識力を測る課題で、AIモデルはこの種の問題で著しく失敗する傾向があるという。
論理パズルの分野でも同様の傾向が見られる。Googleとイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームは2024年、「Knights and Knaves(騎士と悪党)」と呼ばれる、正直者と嘘つきが入り混じった人物の発言から誰が本当のことを言っているかを論理的に推理するパズルでAIモデルを検証した。また、テキストベースの問題集「SimpleBench」では、トップクラスのモデルでもつまずくケースがあると報告されている。ワシントン大学、スタンフォード大学、Allen Institute for AIが共同で研究した「Logic Grid(論理グリッド)」パズルでも、複数の手がかりを同時に整理して唯一の答えを導く作業でAIモデルの弱さが確認された。これらの研究はいずれも、具体的な正答率までは公表されていないが、傾向として「人間なら簡単、AIには難しい」という構図が繰り返し確認されている点が重要だ。
複雑さが増すと急に崩れる——ハノイの塔と川渡り問題
Appleの研究チームが検証した「Tower of Hanoi(ハノイの塔)」と「The River(川渡りパズル)」の実験は、AIの弱点の性質をより具体的に示している。円盤の数や渡る人数といったパズルの複雑さを少しずつ増やしていくと、ある一定の複雑さを超えたところでAIモデルの正答率が急激に落ち込む傾向が確認されたという。人間であれば「手順が増えて面倒になる」程度の変化でも、AIにとっては解けるか解けないかを分ける崖のようなものになっている、ということだ。ここで大切なのは、AIの失敗が「難しくなるほど徐々に下手になる」のではなく、「ある条件を境に急に崩れる」という点だ。わずかな条件の変化に弱いという特徴は、ビジネスでAIに定型業務を任せる際にも、想定外のパターンが少し混じるだけで結果が大きく崩れうることを示唆している。
ARC-AGIの急成長は何を意味するか
一方で、AIの弱点が固定的なものではないことを示す例もある。抽象的な図形パターンから規則性を見つけ出す視覚推理テスト「ARC-AGI」は、この1年でAIモデルの成績が大きく向上したとされる。実際に、Nvidiaの研究チームがClaude Opus 5を使ってARC-AGI3で高い正解率を達成したという報告もあり、視覚的なパターン認識の分野では改善のスピードが速いことがうかがえる。ただし、この記事の時点でも具体的な向上幅の数値は明らかにされていない。
18%からほぼ満点へ——NYTパズルが示す教訓
今回の報告の中で唯一、具体的な数値が示されているのが、ニューヨーク・タイムズのパズルゲーム「Connections」だ。共通点を持つ単語のグループを見つけ出すこのパズルについて、コロンビア大学の研究チームが2024年後半に検証したところ、当時の最良のAIモデルでもわずか18%しか正解できなかったという。ところが2025年序盤までには、一部のAIモデルはほぼ毎回完璧に解けるようになったと報告されている。18%という低い正答率から、ほぼ完璧な水準へとわずか数カ月で到達したことになる。これは、AIの弱点が「克服不可能な限界」ではなく、「今はまだ克服されていないだけ」の場合があることを示す好例といえる。
ビジネスパーソンへの示唆
今回の報告が浮き彫りにするのは、AIの「賢さ」が人間の知能とは質的に異なるものだという点だ。難関試験や複雑な業務では人間を超える成果を出す一方で、人間が無意識にこなす空間把握や状況整理では、AIは意外なほどもろい。AIの「考える」プロセスが人間の思考と同じ仕組みではないという指摘とも重なる話であり、AIに業務を任せる際は「難しそうな仕事は得意、簡単そうな仕事は不得意」という単純な図式が通用しない場面があることを念頭に置く必要がある。特に、少し条件が変わっただけで急に精度が崩れるという特徴は、定型業務の自動化を検討する企業にとって見落としやすいリスクだ。同時に、ConnectionsパズルやARC-AGIの例が示すように、今日の弱点は数カ月後には克服されているかもしれない。AIの現在地を過大評価も過小評価もせず、定期的に実際の精度を確認しながら任せる範囲を調整していく姿勢が、これからのAI活用には求められる。
まとめ
MIT Technology Reviewが紹介した一連のテストは、AIモデルが空間認識や論理パズルといった、人間には直感的な課題で苦戦する現実を伝えている。パズルの複雑さがある閾値を超えると正答率が急落する傾向がある一方、ニューヨーク・タイムズのConnectionsパズルのように、わずか数カ月で18%からほぼ満点へと改善した例もある。AIの弱点は固定されたものではなく、今後も分野によって急速に変化していく可能性が高い。
参考・出典
- MIT Technology Review「These are the puzzles that AI models still can’t solve」
- aigeek.biz「Nvidia研究、Claude Opus 5でARC-AGI3の正解率100%」
- aigeek.biz「AIは本当に考えているのか——推論モデルの『考え中』の中身」

















