AIに孤独を聞いた話

ある土曜の昼下がり、特に理由もなく「孤独って、何だと思う?」とAIに打ち込んだ。

AIはきわめて丁寧に、きわめて正確に答えた。孤独とは他者との接続が断たれた状態であり、進化の観点からは社会的絆を維持するための警告信号と解釈でき、ヘミングウェイからカミュまで多くの文学的テーマを形成してきた、と。

正確だった。完璧だった。コーヒーを一口飲みながら、画面を閉じた。

上京したばかりの冬、誰とも話さない週末があった。近所のスーパーで「袋、お使いですか」と聞かれて「はい」と答えたのが、その土曜の唯一の会話だったことがある。

孤独だったかと聞かれると、そうとも言い切れない。ただあの週末には固有の手触りがあった。

ちなみにその冬、僕はパスタを沸騰させていない水に入れてから火をつけるのが正しいと信じていた。誰も教えてくれなかったし、誰にも聞けなかった。上京一年目とはそういうものだと思う。

AIは孤独の定義を知っている。処方箋もいくつか知っている。でも、孤独を経験したことはたぶんない。

実際に一度も泳いだことのない人が「クロールとは両腕を交互に動かし、顔を水面から出しながら進む技法である」と正確に書く。それで正しい。

AIの答えはビニール傘に似ていた。使えるし、安い。でも誰も大切にしない。

もっとも、と思う。孤独についての問いに、誰かが——正確かどうかはともかく——応じてくれる。その事実は、以前にはなかった。

昔なら、夜に誰かに電話して「孤独ってどういうことだろう」と話すのは、相手を巻き込む行為だった。睡眠があり、予定があり、「それ今話すの?」という空気があった。AIにはそれがない。昼でも深夜でも、等しく返答が来る。それが良いことなのか悪いことなのか、まだよくわからない。

会話を終えて、近所のコンビニへ行った。レジで「袋、よろしいですか」と聞かれた。「いいえ」と答えた。

孤独とは何か、まだわからないままだった。ただ今日はエコバッグを持っていたので断った。それだけのことだ。

  • ハルキ

    AIと孤独と珈琲をこよなく愛するエッセイスト。村上春樹の文体に影響を受けた独特の語り口で、テクノロジーと人間の交差点を描く。

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